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「雛子」


目を開けると、図書館と違う天井があった。


声を辿って横を向くと、そばに美咲の顔。


夢での彼女とは違って、必要以上に顔のパーツをハの字に曲げ、私の名前を何度もつぶやいている。


「美咲?」


「あ、雛子」


よかった、と言って、彼女は息を吐きながらへたりこんだ。


よっぽど気を張りつめていたのだろう。


「ここは……」


見回すと、そこは何度か来たことがある彼女の家で、私はリビングの赤いソファーに横になっているらしかった。


「私、どうしちゃったの?」


視線をひと巡りさせてたずねた私に「気絶」と教えてくれた。


なんとも端的で分かりやすい。


「あれから気を失っちゃったのよ」


「そっ、か……。でも図書館は?」


「大丈夫。博美さんも館長もいるから、心配はいらない」


「うん」


美咲は「ちょっと待ってて」と言い、キッチンへ向かった。


ひとつ深めにため息を吐いた私は、彼女の後姿を追うようにして静かに上体を起こした。