うとうとと一瞬、空飛ぶ羊ではなく執事が見えたような気がした時だった。
「ではこの問題を沢村さん」
頭上付近から聞いていて安心する声が降ってきた。
私は思わず顔をあげかけた。
沢村とは私の苗字だったからだ。
しかしここはタヌキ寝入りを決め込むに限る。
ぐーと寝息をたてる。わざとらしかったか。
「沢村さん?この問題を解いてください」
ぽんぽんっと頭をたたかれた。
暗い視界の中で、私は思わず「いっ」と呻いた。
女子からは「いいなー」と嫉妬心を買ったが、どこがいいもんか。
こいつ今、さりげなく強くたたきやがったんだぞ。


