それから数週間後。


私は大量の視線を浴びながら席に着いた。


いつもならとっとと席を離れ、安らぎの屋上へと移動して、昼寝しているかたまに来る安葉と会話をしている。


1時間目が数学だったから。


いや別にあんなだらけ教師に用はない。


私がようがあるのは、ウワサの『さわやか先生』のほうだ。


何日かぶりに机の上の教科書をめくる。


数学が得意とは言い難い私を拒むようにところどころ張り付いてページを剥がさなければならなかった。


すぐにふにゃりと別ページが開かれるし。


全然使っていない証拠だ。


さっきも言ったように周りの視線が集まってきているので照れているのかもしれないし。


得にすることはないのでパラパラーと読書好きに睨まれそうなスピードで教科書を動かす。


そのへんな空気に包まれていると、教室の立てつけの悪いドアが勢いよくスライドされた。


「おはよう」