ブラウン・アイズ

ガッ・・・


ラケットにあたったボールが鈍い音をたてる。





今日ネット多いな……。





深木のことを考えると、不思議な気持ちになる。


それは、今まで1度もなったことのない気持ち。



何だろう・・・






あ。

もうボール残ってない…



「交代です」


あたしはうつむきながら、テニスコートを出た。





「郁ちゃん…」

ベンチに座って、休憩していた郁ちゃんに声をかける。



「あ、あぁ。何?」


郁ちゃんはボンヤリしてた。



郁ちゃんがぼんやりするのは結構珍しい。

あたしはしょっちゅうだけど。




「大丈夫?」




「えっ、あぁ、うんっ」

やっぱりまだボンヤリしてる。


そっとしておこう・・・






やっぱり……

あたしは郁ちゃんに言わなきゃいけないことがある。





言わなきゃ・・・言わなきゃ。


「ねぇ、あのね…」

「うん…」



「深木にメアド教えた」