「………けっ!やりきれねぇや」
捨て台詞を吐き、渋々引いてやったみたいな感じでカフェから退室していく男。
椿野は、小さな窓から窓へと高速スピードで移動する金髪を無表情で見つめる。
「お嬢様!怪我はございませんか!」
「なんでカイトがいるの?」
可愛く首をかしげる鷹司に、頬を染めながらカイトは答える。
「いえ、ずっと見ておりました………あの窓から」
入口に近い窓を指さす方角を一瞥し、鷹司はむぅっと唇を尖らせる。
「ばれてたんだ……」
「もちろんでございます。私の役目はお嬢様の安全確認と家事ですから」
胸に手を当て優雅に一礼したカイトの後ろから、ひきつった顔の初老の男がぬっと出てきた。
「あっ店長!」
店長と呼ばれた初老は、苦々しく鷹司に言った。
「………あのね鷹司さん。確か面接のとき言っったはずなんですけど………」


