鍵がかかっていない家に足を踏み入れた。
独特の木のにおいと少々のカビ臭さが鼻についた。不快だとは一切思わなかった。むしろ熱い思いがこみ上げてくる。
ギシッと成人男性の体重に悲鳴を上げる廊下を進み、鷹司と過ごした居間へとたどり着いた。
誰もいない。
覚悟はしていたつもりなのだが、残念な気持は隠しきれない。
そして台所へ行った。
さびかけているタイルをみると、あのレンは掃除はしなかったようだ。
しかし炊事場を使った形跡はある。料理が出来て幸いした。
ここでいつも鷹司に邪気のない瞳に見守られて、鷹司に喜んでもらえる食事を精を込めて作っていたのだ。
カイトは湧き上がってくる感情を抑え、いろいろな部屋に移動した。
どれもかしこも鷹司との追想をよみがえらせる痕跡を残していた。


