その刹那、一人の美女の顔が現れた。
カイトは決意した瞳を目の前の由姫華へ向けた。由姫華は嬉しそうに笑顔を開花させるが、それは月下美人よりも短く儚げなものだった。
「………カイト?」
急速にしぼんでいく笑顔の花をカイトはただ真剣に見つけた。
誠実な瞳の奥の決意が炎のように揺らめき美しい。由姫華にとっての地獄で亡者を燃やしつくす恐怖の炎にしか思えなかった。
カイトは素早く立ち上がり、偶然前を通りかかったメイドを呼び止めた。
「由姫華お嬢様をお願いしてよろしいですか?」
メイドは物言いたげに首をかしげたが、綺麗な微笑みを浮かべ頷いた。
カイトはネクタイをなおし、部屋を飛び出した。
一度も振り返らずに。


