唇についた髪の固まりを自分で払い、彼女は声を落とした。
「………気分が悪いの」
カイトが部屋の中に踏み出した。少し上気する由姫華の頬。
そこで由姫華に持たされていた携帯が音を立てた。
何だ、とイライラしながら教えられたとおりのボタンを押す。
親指で押したところからあまり使い慣れていない様子が見られた。
『カイト?』
もう聞くことはないと決めつけていた声音がリターンしてきた。
「つっ椿野様?なぜこの番号を………」
『細かいことをぐちぐち言わないの面倒くさい。だから貴方はいつまでたっても旗のように周りに流されるのよ』
久々に聞いた毒舌でなぜか安心した。
『それより、貴方早く帰ってきなさい』
彼女の声音は若干焦っているようにとれた。


