今日は由姫華に一度も会っていない。
寝起きは私の部屋でやれ、と冗談ともつかない顔で言われたのだがもちろんそんなことできるはずもなく、ありがたく自室をいただいている。
そこだけであのボロ屋より大きかった。
そこまで考えたとき、はっと気がついた。
あの家のことはもう忘れようと思っていたのに、しみじみ過去に浸っていたら決心の意味がなくなるではないか。
「いかんいかん」
かぶりを激しく降ってそれらを振り払う。
自ら手放したものを未練がましく思い続けるなど執事として失格だ。
頭の中をしっかりチェンジし終え、何の気なしもなく由姫華の部屋へ入った。
執事はノックはしないのだ。
少なくともカイトはそう教えられていた。


