『自分より姉の沙良をとる、とでも思ってんのか。ずっと己以下だと思っていた姉に白旗あげんのか?しかも戦わずしてか。愛の深さが恋にはものいうんだろ?だったらあんたの愛は沙良以下か。いやそれにも及ばねぇ』
すぅっと大きく息を吸う音が聞こえる。
『蟻んこと像みてぇなもんか。それとも神と微生物?宇宙と地球?比べるのすら意味がなさないもんなのか………先に奪っておいて後で仲良くなればいい、なんて甘っちょろい考えしてたくせにそれもかなわなかったのか?』
携帯がいやな音をたてた。ぴきぴきと今にも割れそうな音が耳に付く。
『別に強制はしねぇよ。うわべだけの男を奪って満足してんならそれでいい。だがな見かけだけの愛なんざもろいぜ………弱虫で無理やり人を縛り付けるだけの人生を送ったらいい。俺は沙良様と本当の恋にでもおちてしあわせになるさ』
冗談とも本気ともいえる人声で彼は言った。
んじゃあな負け犬、と捨て台詞を吐いた。
そのまま切ろうとした雰囲気が伝わってきた。
「待ちなさい」
その言葉にレンは従ったようだ。今もなお通話状態を保たれている。
由姫華の静かな怒りは闇で揺らめく一筋の青い焔を思わせた。


