由姫華のケータイが電子音を奏でた。
気安くかけてくる友人や知人などは持っていない。
うっとおしそうに通話ボタンを指の腹で押し、耳にあてた。
ベッドに腰がけた由姫華の目前にはせっせと掃除に身を汚しているカイトがいる。
家政婦みたいね、とどうでもいいことを思っていると沈黙していた相手が口を開いた。
『よぅ』
この低く空を飛ぶ鳥までを魅惑させ、墜落させそうな甘い声は。
「なにかしらレン。もうかけてくるなといったはずよ」
歯牙にもかけない声音で由姫華は言った。
『まあそういうなよつれねぇな。で、どうだ?王子様との甘甘ライフはよ』
若干からかいと皮肉を混ぜた言葉がスピーカーの奥から返ってきた。
「余計なお世話よ」
ぴしゃっとシャッターを閉める勢いで心の扉を閉めた。
この男に胸の内を探られているようで気に食わなくなったのだ。


