家の中へ戻ると、居間のちゃぶ台で勉強をしている鷹司がいた。
「あっちゃんと帰ってくれた?」
明るい笑顔を作り、彼女はレンに訊いた。
無理してらぁと心の中だけで言っておくことにする。
「ああまぁな。渋ってたみてぇだがお帰りいただいたよ」
レンはそのまま畳に尻をつけることなく台所へ移動した。執事というなら晩飯を作らねばならない。
由姫華のもとではお世辞にも仕事をしたとはいえない彼が、包丁を握る姿は似合っているとは言い難い。どんな男性でも包丁はあまり似合わない。
「なんかあんのかな」
冷蔵庫をのぞき、あまりの食材のなさでどうやって今まで食事をやりくりしてきたのか、目を疑うほど空っぽだったのにレンは煙草を落としそうになった。
バターとしっかり保存されている人参の切り残しを、彼はいつまでも眺めていた。


