「うふふ。レンに言われるのとでは大違いね」
レン、という人物の名前でモヤモヤしていた何かが明確になった。
「あの………レン、という方は?」
おずおずと訊いてみる。
控えめな態度に薄ら笑いを浮かべ由姫華は答えた。
「お姉さまのところへ行かしたわ」
「お姉さま………」
ぱっと頭に鷹司の笑顔がよみがえってきた。元気いっぱいに走り回っているが、徐々に色あせ動かない写真へ成り下がってしまった。
鷹司は元気なのだろうか。あのレンとかいう執事は料理、家事はできるのだろうか。彼女は自分を恨んでいないだろうか。
椿野のつりあがった目を想像すると胸が痛んだ。
それよりカイトを苦しめたのが、鷹司の知らぬ本心。
暗黙の了解を破った自分のことをどう思っているのだろうか。この期に及んで嫌われたくないと思う自分がいる。


