「カイト?どこを見てるの?」
カイトは我に返った。ずっと夢の中でさまよっていたようだ。目の前では怪訝そうに顔に皺を寄せている由姫華がいた。
「あっもっ申し訳ございません由姫華様」
慌てて頭を下げ非礼を詫びた。由姫華は片腕でそれを制し赤い椅子に腰がけた。一つ一つの動作に気品がある。
由姫華は長いまつげを薄らと下げ、愛おしそうにカイトを見つめた。
カイトは目を合わせることができない。
「やっとカイトが私のそばに来てくれたわ」
いつもの鋭い目つきが今は柔らかに丸みを帯びている。
カイトは曖昧に微笑み胸に手を当てた。
「由姫華様、久しぶりにお会いいたしますが相も変わらずお美しい」
世辞ではなく本心で言ったからか、由姫華は喜んだ。幼いころの鋭利な顔つきは成長に伴いクールな顔になっていた。成長の過程に何かあったのかもしれないが、カイトには確認しようがないし別に知りたくもなかった。


