「はぁ?」
ワンピースコートのポケットから何かを素早く取り出し、従業員に投げつけた。
カスっと頬をかすめ後ろのポールに突き刺さった。
恐る恐ると従業員はかすめ去られた頬の肉があった場所をなでる。
赤い液体がべっとりつく。
さぁぁっと波が引くように顔色が悪くなっていく。
「誰に向かってその口きいてんの?」
ポールに刺さった針につけた糸を引っ張り、手繰り寄せながら言った。
「はっ針………!ささ………!」
呂律が回らず、従業員は尻をつかせた。
一歩踏みより、椿野は太陽の光を背にして優雅に唇の端を歪めた。
「あら?その口縫い閉じて欲しかった?目にきれいな柱を建てて欲しかったのかしら」


