「沙良、とかでしたっけ」
姉の名前を覚えていないとは。
井筒は目を疑った。
平然とそんな事を優雅に言い放つ彼女に驚愕したのだ。
椿野は目を三角にし、由姫華に言った。
「とかでしたっけとは。姉のお名前も覚えられない頭をもっているのですか?」
「おっおい椿野さん!」
あまりに無礼な物言いに井筒は息をのんだ。
ぴくりっと由姫華の眉が跳ね上がる。
プライドの高い彼女にとって、格下の椿野家に馬鹿にされたことが気に食わないのだろう。
「数年前に会ったきりなので」
だがそれを微塵も顔に出さず、彼女はうつ向いた。


