「なんだい君は。僕が最初に誘ったんだ」
「見知らぬやろうと沙良を一緒にするわけにはいかなくてよ」
野郎とはずいぶん下品な言い方である。
「下品なお嬢様だ。それでも大富豪としての実感はあるのかい?」
「あなたみたいな成金やろうに比べたらずいぶんとね」
紳士的なふるまいを心がけていた井筒も、我慢の限界というものがついに来た。
「成金だと?失敬な!だ、第一次世界大戦によるバブル景気によって、鉄鋼業を営む井筒家は一般に広まって急速な右肩上がりで金持ちになっただけだ!」
「それを成金っていうのよ」
椿野は付き合いきれない、という表情を浮かべた。


