その日は満月の夜だった。

それを自分は待っていた。

数十年に一度の夜。

聖木はただ、目の前にいる者を威嚇する事もなく静観していた。

護符の力は相当なものだが、聖水で汚れを流した手なら最低限の抵抗で済むだろう。

「ふう…」

一息つくと手に力を入れ、護符に触れる。

一瞬の電撃。

だが、その痛みに手を離す事はなく、そのまま思い切り引きはがす。

その瞬間。

今まで静観していた聖木の葉が黄金色に輝きだす。

そして、葉が自ら宙に浮き、天に離れていく。

その葉がお互いの葉の存在を確認するように円を描きながら回りだす。

だが、周期的に回っていた葉は、ある瞬間、いきなり飛び散った。
そして、その葉の一つは自分の目の前に降り立つ。

それは新たなる力の象徴を自分が手にした瞬間だった。

葉に手で触れると統べての意識が一瞬飛ぶ。

だが、その一瞬を経て、その後に感じたのは絶対的な力を手に入れた満足感だった。

「あはははははははは…」

渇いた空に笑い声が響き渡っていた。