その日は、息を吐くと白いもやもやが見えるようなそんな寒い朝だった。

いつもの日課である境内の掃除も、時間を掛けずに簡単に終わらせたい、そんな気分でいっぱいだ。

だが…

「おい、耕太よ、手を抜くんじゃないぞ!」

そんな気持ちはお見通しとばかりに後ろから声が掛かった。

その声の主は自分にとって一番身近な人、じいちゃんだ。

うんざりしながらも俺はけだるく後ろに振り返る。

「分かってるよ、じいちゃん!、でもさ、寒いし早く終わりにしたいんだよ!」

「ふん、最近の若い者は!、ちと寒くなるだけでまるで南極にでもいるような騒ぎかたをしおる、本当に情けない!」

じいちゃんの名前は山岡米吉、もう80は過ぎているというのになんでこんなに元気なんだ?。

自分の中の一番の謎を頭で考えているうちにじいちゃんは自宅のほうに歩きだしていた。
「じいちゃんだけ、ずるいよ!、年寄りだからって!」

じいちゃんは鋭い目つきをしながら振り返る。

「耕太!、年寄り扱いとは許せん!、また昔みたいにわしに百烈しりたたきをされたいか?」