「転校生だからなのか、避難して来たからなのかは知らないけどね。そっちはそっちで遠慮ってもんが過ぎるんだよ!おまえだってキンタマ付いてんだろ?ああいう時は相手に噛みついてでも、ねえちゃんの一人ぐらい守って見せねえか!」
その男の子は怯えた顔でかろうじて返事をした。
「は、はい。すいません……」
「分かればいいんだ。よし、また絡まれないうちにさっさと行きな」
手を離し陽菜はまたさっきの渡り廊下の端に戻る。下駄箱の傍まで行った所でさっきの姉の方が大声で陽菜に呼び掛けた。
「あ、あの!」
そちらに顔を向けた陽菜に彼女はぺこりと頭を下げ「ありがとう!」と叫ぶように言って、そのまま逃げるように下駄箱の向うに姿を消した。陽菜は両手を床について、独り言を言った。
「あ~あ。玄野や兄さんに比べたら、あたしに出来る事なんてこの程度でしかないのかよ。こんな事何万回やったからって、何も変えられやしねえよ。はああ、つくづく自分が情けねえ」
「あら、そうでもないと思うわよ」
不意に左肩をポンと叩かれ、陽菜は上体をのけぞらせてその手の主を見た。それは陽菜のクラスの学級委員長だった。
「なんだ、委員長。今の見てたのかよ?」
「ふふ。今の尾崎さん、いつもにもまして格好よかったわよ。そこで尾崎さんにお願いがあるんだけど」
「はあ?何だよ?」
「実は近々カラオケパーティをやろうと思ってね」
「へえ、優等生の委員長がカラオケ?それは驚き!」
「もう!あたしだって現役女子高生なんだから、カラオケぐらい行くわよ!」
「あはは、悪い、悪い、冗談だって。で、それがどうしたんだ?」
「ええ、福島県から転校してきた子たちを誘おうと思ってね。うちの学校の生徒と、まあ、親睦会みたいな」
「へ?なんでまた?」
その男の子は怯えた顔でかろうじて返事をした。
「は、はい。すいません……」
「分かればいいんだ。よし、また絡まれないうちにさっさと行きな」
手を離し陽菜はまたさっきの渡り廊下の端に戻る。下駄箱の傍まで行った所でさっきの姉の方が大声で陽菜に呼び掛けた。
「あ、あの!」
そちらに顔を向けた陽菜に彼女はぺこりと頭を下げ「ありがとう!」と叫ぶように言って、そのまま逃げるように下駄箱の向うに姿を消した。陽菜は両手を床について、独り言を言った。
「あ~あ。玄野や兄さんに比べたら、あたしに出来る事なんてこの程度でしかないのかよ。こんな事何万回やったからって、何も変えられやしねえよ。はああ、つくづく自分が情けねえ」
「あら、そうでもないと思うわよ」
不意に左肩をポンと叩かれ、陽菜は上体をのけぞらせてその手の主を見た。それは陽菜のクラスの学級委員長だった。
「なんだ、委員長。今の見てたのかよ?」
「ふふ。今の尾崎さん、いつもにもまして格好よかったわよ。そこで尾崎さんにお願いがあるんだけど」
「はあ?何だよ?」
「実は近々カラオケパーティをやろうと思ってね」
「へえ、優等生の委員長がカラオケ?それは驚き!」
「もう!あたしだって現役女子高生なんだから、カラオケぐらい行くわよ!」
「あはは、悪い、悪い、冗談だって。で、それがどうしたんだ?」
「ええ、福島県から転校してきた子たちを誘おうと思ってね。うちの学校の生徒と、まあ、親睦会みたいな」
「へ?なんでまた?」



