時代から考えて玄野本人という事はないだろう。もし陽菜の想像通りだとすれば、玄野の何代目かの子孫、あるいは僧侶としての何代目かの弟子というところだろう。そしてあの時アベは言っていた。人が近寄れるようになるまで200年はかかる、と。
放射性セシウムとストロンチウムは、半減期と言って、約30年で放射性でない別の元素に半分が崩壊する。200年経てば、あの巨大な放射性物質の結晶でも放射線は弱くなり近寄って破壊する事も可能だ。室町時代にそんな事を知っている人物がいたとしたら、それは玄野が教えた事としか考えられない。
陽菜の目から大粒の涙がこぼれ落ちた。陽菜は心の中でこうつぶやいた。
ゲンノ、おまえはやっぱりすごい奴だ。平安時代に残ってそこで人生を終えてなお、200年後に、自分はとっくに死んでいるはずの遠い未来にやるべき事を、おまえはちゃんと分かっていたんだな。そして、見事にそれをやり遂げたんだな。
気を取り直してページをめくると、また意外な単語が陽菜の目に飛び込んできた。そこには「オサキ」という伝説が記されていた。オサキと言えば陽菜の苗字ではないか?
「おっ!ひょっとして、あたしも歴史に名を残したのか?」
思わずそうつぶやいて文章を目で追う。そこにはこう書いてある。
「オサキ狐とも呼ばれる。九尾の狐の部下、お先払いを勤めるのでオサキと呼ぶという説もある」
陽菜は一旦ページから目を話して小声でブーたれた。
「まあ、しゃあないか。フーちゃんの方が目立ってたからな」
またページに目を戻す。続きにはこうあった。
「九尾の狐が才色兼備の絶世の美女の姿で現れるのに対し、オサキは垢抜けない田舎娘の姿で現れる事が多い。普段は騒々しいだけで特に人に害を成す事はないとされるが、腹を空かせるとたまに凶暴になる事があり……」
そこで陽菜はパタンと本を閉じ、本を書架に戻しながら下を向いて自分に言い聞かせるようにつぶやいた。
「こっちは単なる偶然だ。そうに決まってる。そう思う事にしよう……」
放射性セシウムとストロンチウムは、半減期と言って、約30年で放射性でない別の元素に半分が崩壊する。200年経てば、あの巨大な放射性物質の結晶でも放射線は弱くなり近寄って破壊する事も可能だ。室町時代にそんな事を知っている人物がいたとしたら、それは玄野が教えた事としか考えられない。
陽菜の目から大粒の涙がこぼれ落ちた。陽菜は心の中でこうつぶやいた。
ゲンノ、おまえはやっぱりすごい奴だ。平安時代に残ってそこで人生を終えてなお、200年後に、自分はとっくに死んでいるはずの遠い未来にやるべき事を、おまえはちゃんと分かっていたんだな。そして、見事にそれをやり遂げたんだな。
気を取り直してページをめくると、また意外な単語が陽菜の目に飛び込んできた。そこには「オサキ」という伝説が記されていた。オサキと言えば陽菜の苗字ではないか?
「おっ!ひょっとして、あたしも歴史に名を残したのか?」
思わずそうつぶやいて文章を目で追う。そこにはこう書いてある。
「オサキ狐とも呼ばれる。九尾の狐の部下、お先払いを勤めるのでオサキと呼ぶという説もある」
陽菜は一旦ページから目を話して小声でブーたれた。
「まあ、しゃあないか。フーちゃんの方が目立ってたからな」
またページに目を戻す。続きにはこうあった。
「九尾の狐が才色兼備の絶世の美女の姿で現れるのに対し、オサキは垢抜けない田舎娘の姿で現れる事が多い。普段は騒々しいだけで特に人に害を成す事はないとされるが、腹を空かせるとたまに凶暴になる事があり……」
そこで陽菜はパタンと本を閉じ、本を書架に戻しながら下を向いて自分に言い聞かせるようにつぶやいた。
「こっちは単なる偶然だ。そうに決まってる。そう思う事にしよう……」



