雑兵たちは混乱した様子で、とりあえず陽菜たちを馬上の武者姿の年配の男の側まで連れて行った。アベの紙包みを雑兵の一人から受け取ったその男は、外側の紙を開き中の折り畳まれた紙を開いて読むと、すぐに馬から飛び降りてアベの側に走り寄った。兜を脱いでアベに軽く頭を下げて言った。
「これはご無礼をいたしました。では、あなた様が院のお上の書状にあった陰陽師殿であらせらるか?」
「いかにも。安倍泰成と申す」
「那須野の領主、権守(ごんのかみ)須藤貞信にございます。東国のこのような田舎まで、お役目御苦労にございます」
「して、権守殿、これは何の騒ぎでございますか?」
「あれに……」
そう言ってその武者姿の男はフーちゃんが残した金属容器を指さした。
「雑兵を二人、様子を見に差し向けましたところ、突如苦しみ出し、這って戻ったもののそのまま地に倒れ伏し……」
男はそう言って、今度は少し離れた地面に横たえられている二人の雑兵を指さした。一人はピクリとも動かず、もう一人は全身が細かく痙攣するようにかすかに震えている。
「何という事じゃ!この安倍泰成、一生の不覚!」
突然アベが芝居がかった大声を上げた。服の袖から銅鏡、いや例の立体映像投影機を取り出し、金属容器に向け「ハアッ!」と声を上げる。銅鏡からまばゆい光が金属容器に照射され、その上に九本の尾を持つ巨大な狐の影が浮かび上がった。それを見た雑兵たちが一斉に悲鳴を上げて後ずさる。
「陰陽師殿、あれは?」
さすがに怖気づいて後ずさりこそしないものの、顔面蒼白になったさっきの男が言う。アベはことさらに重々しい口調で答えた。
「あれこそが妖孤の本体。実はつい先ほど、追っていた女人はわれの供の者が矢で仕留めたところでありました。ほれ、あちらに火の手が見えておりましょう?あれはその亡骸を荼毘に付しておったところでございます。しかし、あの娘は体を乗っ取られた依代に過ぎなかったのか?あの面妖な岩こそが、あの妖怪の本体だったのでございます」
「これはご無礼をいたしました。では、あなた様が院のお上の書状にあった陰陽師殿であらせらるか?」
「いかにも。安倍泰成と申す」
「那須野の領主、権守(ごんのかみ)須藤貞信にございます。東国のこのような田舎まで、お役目御苦労にございます」
「して、権守殿、これは何の騒ぎでございますか?」
「あれに……」
そう言ってその武者姿の男はフーちゃんが残した金属容器を指さした。
「雑兵を二人、様子を見に差し向けましたところ、突如苦しみ出し、這って戻ったもののそのまま地に倒れ伏し……」
男はそう言って、今度は少し離れた地面に横たえられている二人の雑兵を指さした。一人はピクリとも動かず、もう一人は全身が細かく痙攣するようにかすかに震えている。
「何という事じゃ!この安倍泰成、一生の不覚!」
突然アベが芝居がかった大声を上げた。服の袖から銅鏡、いや例の立体映像投影機を取り出し、金属容器に向け「ハアッ!」と声を上げる。銅鏡からまばゆい光が金属容器に照射され、その上に九本の尾を持つ巨大な狐の影が浮かび上がった。それを見た雑兵たちが一斉に悲鳴を上げて後ずさる。
「陰陽師殿、あれは?」
さすがに怖気づいて後ずさりこそしないものの、顔面蒼白になったさっきの男が言う。アベはことさらに重々しい口調で答えた。
「あれこそが妖孤の本体。実はつい先ほど、追っていた女人はわれの供の者が矢で仕留めたところでありました。ほれ、あちらに火の手が見えておりましょう?あれはその亡骸を荼毘に付しておったところでございます。しかし、あの娘は体を乗っ取られた依代に過ぎなかったのか?あの面妖な岩こそが、あの妖怪の本体だったのでございます」



