その意外な玄野の反応に陽菜は言葉を失った。
「え?どういう意味だよ、ゲンノ」
「過去の日本人に復讐する権利がフーちゃんにだってあったんじゃないか?あの時代、福島原発からの電気で快適な、便利な生活を満喫してきた俺たちに、フーちゃんの邪魔をする権利はあったんだろうか?フーちゃんの命を奪ってまで?」
「そ、それは……」
今度こそ陽菜はもう何も言えなくなってしまった。しばらくパチパチと薪のはぜる音以外何も聞こえない沈黙がその場を支配した。
だが突然、少し離れた場所から大勢の人間の悲鳴や怒号が全員の耳に飛び込んできた。あわてて声が聞こえた方向を見ると、あの金属容器がある辺りにたくさんの松明の火が見えた。彼らが気付かないうちに誰かは分からないが大勢の人間が近くまで来ていたらしい。
アベを先頭にみんなでその場所へ駆けつける。そこには馬に乗った鎧姿の数人の武者と数十人の雑兵が、金属容器を遠くから見つめながら大騒ぎを演じていた。その少し手前でアベが立ち止まって顔を思いっきりしかめてつぶやいた。
「しまった!これでもうあの放射性物質の結晶を回収する事は出来なくなってしまった」
「どういう事です」
そう訊く昭雄にアベは苦々しげな表情で言う。
「この時代の、それもあれほどの数の人間に目撃されてしまった以上、あの金属容器の存在はもう歴史の一部になってしまったという事だよ。一度確定してしまった歴史的事象は未来人の手で変えてはいけない」
「そこにおるのは誰じゃ!」
陽菜たちを見咎めた雑兵が三人槍を構えて走り寄って来た。アベは陰陽師の服の懐から紙包みを取り出して正面に掲げながら答える。
「われは都の院の仰せにより、妖孤追討に参った者。そなたたちは、もしや国の守の手の者であるか?」
「え?どういう意味だよ、ゲンノ」
「過去の日本人に復讐する権利がフーちゃんにだってあったんじゃないか?あの時代、福島原発からの電気で快適な、便利な生活を満喫してきた俺たちに、フーちゃんの邪魔をする権利はあったんだろうか?フーちゃんの命を奪ってまで?」
「そ、それは……」
今度こそ陽菜はもう何も言えなくなってしまった。しばらくパチパチと薪のはぜる音以外何も聞こえない沈黙がその場を支配した。
だが突然、少し離れた場所から大勢の人間の悲鳴や怒号が全員の耳に飛び込んできた。あわてて声が聞こえた方向を見ると、あの金属容器がある辺りにたくさんの松明の火が見えた。彼らが気付かないうちに誰かは分からないが大勢の人間が近くまで来ていたらしい。
アベを先頭にみんなでその場所へ駆けつける。そこには馬に乗った鎧姿の数人の武者と数十人の雑兵が、金属容器を遠くから見つめながら大騒ぎを演じていた。その少し手前でアベが立ち止まって顔を思いっきりしかめてつぶやいた。
「しまった!これでもうあの放射性物質の結晶を回収する事は出来なくなってしまった」
「どういう事です」
そう訊く昭雄にアベは苦々しげな表情で言う。
「この時代の、それもあれほどの数の人間に目撃されてしまった以上、あの金属容器の存在はもう歴史の一部になってしまったという事だよ。一度確定してしまった歴史的事象は未来人の手で変えてはいけない」
「そこにおるのは誰じゃ!」
陽菜たちを見咎めた雑兵が三人槍を構えて走り寄って来た。アベは陰陽師の服の懐から紙包みを取り出して正面に掲げながら答える。
「われは都の院の仰せにより、妖孤追討に参った者。そなたたちは、もしや国の守の手の者であるか?」



