地面にうつぶせに横たわったフーちゃんの体を玄野が背中から抱き起こす。陽菜は前からフーちゃんの顔を両手ではさんで持ちあげた。フーちゃんはもう息をしていなかった。その顔は、もうさっきの狂気の表情は跡形もなく消えて、まるで幸せな夢でも見ながら眠っているかのような、安らかな死に顔だった。
痛々しく腹と胸に刺さった矢を陽菜は引き抜こうとしたが、何かに引っかかったようになかなか抜けない。玄野が陽菜の手をそっとどけて、二本の矢を引き抜いた。アベの独り言が二人の背中から響いて来る。
「よし。爆破装置ははずした。後は……い、いかん!」
ギギギという耳障りな音がした。振り向いた陽菜と玄野は、放射性物質が入った卵型の金属容器が真ん中から割れるように開いて行く。アベは数秒その容器をあちこち触ってみたが、すぐに二人の方を振り向いて叫ぶ。
「ここから離れろ!早く!走れ!」
玄野はフーちゃんの遺体を背中に背負い、駆け付けた明雄が玄野の腕を引っ張って走りだす。陽菜もアベに急かされて全速力で近くの岩場めがけて走った。
あのギギギという音は十数秒続き止まった。百メートルほど離れた岩場の陰に身を隠し、金属容器の様子をうかがうと外側の金属の殻が、二枚貝が上を向いて口を開いた様な中途半端な開き方で止まっていた。
アベが例の扇子型のコンピューターを開いて、金属容器を宙に浮かんだスクリーンに映し出す。そのスクリーン越しに見ると、容器の開いた口から赤と緑の光線が目も眩むほどの勢いで上に向けて放出されていた。おそらく放射線を可視化した映像なのだろう。アベは宙に浮かんだ光のキーボードを叩きながらまた独り言を言い始める。
「単位が……そりゃマイクロシーベルトなはずはないな。ミリシーベルト……も、やはり駄目か。シーベルトでは……毎時、100、200……こりゃ致死量どころか即死するレベルだな。ん?馬鹿な!1000……2000……駄目だ!振り切れた!」
痛々しく腹と胸に刺さった矢を陽菜は引き抜こうとしたが、何かに引っかかったようになかなか抜けない。玄野が陽菜の手をそっとどけて、二本の矢を引き抜いた。アベの独り言が二人の背中から響いて来る。
「よし。爆破装置ははずした。後は……い、いかん!」
ギギギという耳障りな音がした。振り向いた陽菜と玄野は、放射性物質が入った卵型の金属容器が真ん中から割れるように開いて行く。アベは数秒その容器をあちこち触ってみたが、すぐに二人の方を振り向いて叫ぶ。
「ここから離れろ!早く!走れ!」
玄野はフーちゃんの遺体を背中に背負い、駆け付けた明雄が玄野の腕を引っ張って走りだす。陽菜もアベに急かされて全速力で近くの岩場めがけて走った。
あのギギギという音は十数秒続き止まった。百メートルほど離れた岩場の陰に身を隠し、金属容器の様子をうかがうと外側の金属の殻が、二枚貝が上を向いて口を開いた様な中途半端な開き方で止まっていた。
アベが例の扇子型のコンピューターを開いて、金属容器を宙に浮かんだスクリーンに映し出す。そのスクリーン越しに見ると、容器の開いた口から赤と緑の光線が目も眩むほどの勢いで上に向けて放出されていた。おそらく放射線を可視化した映像なのだろう。アベは宙に浮かんだ光のキーボードを叩きながらまた独り言を言い始める。
「単位が……そりゃマイクロシーベルトなはずはないな。ミリシーベルト……も、やはり駄目か。シーベルトでは……毎時、100、200……こりゃ致死量どころか即死するレベルだな。ん?馬鹿な!1000……2000……駄目だ!振り切れた!」



