それから十分ほどの短い間だったが、時間航行空間を移動するタイムマシンの中で陽菜たちは未来人の男とこんな会話をした。
明雄がまず言った。
「ええと、あなたの事は何と呼べばいいんです?」
「アベでかまわないよ。苗字の方は私の本名なのでね」
「ではアベさん。あの上皇の懐に入っていた球体は何なんです?」
「詳しく分析しないと確かな事は言えないが、おそらくは放射性セシウムの塊だろうね」
「セシウム?!」
玄野が驚愕の声を上げた。
「俺たちの時代の原発事故で大騒ぎになっていたアレですか?」
「そのようだね。なるほど、だから21世紀のあの時代に寄り道する必要があったのか」
玄野は少し青い顔色になってアベに尋ねる。
「だったらあの上皇様、死んじゃうんじゃ?」
アベは軽く頭を横に振って答えた。
「いや、それは心配ないだろう。確かに体調を崩したのは急性の外部被曝だが、短時間だったから深刻な健康被害ではない。念のために22世紀の治療薬を飲ませておいたから、一か月ほどで回復するはずだ」
今度は陽菜が訊いた。
「それでフーちゃんは今どこにいるの?」
「北関東の山の中だ。多分もうタイムマシンは動かなくなっているはず。私たちが上皇の屋敷にいた、あの時点から三日経過した時空に不時着したようだな。計算通りだ、おっと」
不意に計器の一つが断続的な警告音を発した。アベはそれを見て、さらに真剣な目つきになった。
「どうやらレーダーで捕捉できたようだ。私たちも降りるぞ」
明雄がまず言った。
「ええと、あなたの事は何と呼べばいいんです?」
「アベでかまわないよ。苗字の方は私の本名なのでね」
「ではアベさん。あの上皇の懐に入っていた球体は何なんです?」
「詳しく分析しないと確かな事は言えないが、おそらくは放射性セシウムの塊だろうね」
「セシウム?!」
玄野が驚愕の声を上げた。
「俺たちの時代の原発事故で大騒ぎになっていたアレですか?」
「そのようだね。なるほど、だから21世紀のあの時代に寄り道する必要があったのか」
玄野は少し青い顔色になってアベに尋ねる。
「だったらあの上皇様、死んじゃうんじゃ?」
アベは軽く頭を横に振って答えた。
「いや、それは心配ないだろう。確かに体調を崩したのは急性の外部被曝だが、短時間だったから深刻な健康被害ではない。念のために22世紀の治療薬を飲ませておいたから、一か月ほどで回復するはずだ」
今度は陽菜が訊いた。
「それでフーちゃんは今どこにいるの?」
「北関東の山の中だ。多分もうタイムマシンは動かなくなっているはず。私たちが上皇の屋敷にいた、あの時点から三日経過した時空に不時着したようだな。計算通りだ、おっと」
不意に計器の一つが断続的な警告音を発した。アベはそれを見て、さらに真剣な目つきになった。
「どうやらレーダーで捕捉できたようだ。私たちも降りるぞ」



