上皇の傍にはフーちゃんと二人の女官が座っていた。女官たちが金切り声で叫ぶ。
「あれえ!誰か、誰かあるか?」
すぐに数人の護衛の武者が部屋に駆けつけて来た。腰の刀の柄に手をかけながら、その陰陽師に向かって叫ぶ。
「何奴か?ここを院と知っての狼藉か?」
だが陰陽師は武者たちには目もくれず、袴の腰に下げた小さな魚型の飾り物を手に取り部屋のあちこちにそれをかざす。あのピピピピという音はその飾り物から出ていたようだ。やがて音がどんどん大きくなっていき、陰陽師がそれを上皇の体に向けた時音が一番大きくなった。
陰陽師は武者たちが制止する間もない素早さで上皇のすぐ傍に走り寄り「お上、御免!」と叫んで上皇の着物の懐に手を突っ込み、布に包まれた何かを取り出した。結び目を解くと中から黄色がかった銀色に輝く小さな球体が床に転がった。
陽菜はそれが昨日の朝、フーちゃんが上皇に渡した物だという事に気付いた。陰陽師が手の中の飾り物をその球体に近づけると、あのピピピピという音が耳をつんざくほどに大きくなった。
一体何が起きているのか見当もつかず、茫然として立っている武者や女官たちを尻目に陰陽師は自分の懐から小さな金属らしき物で出来た四角い箱を取り出して、球体を箱の中に入れ蓋を閉める。するとピピピピという音が急に小さくなる。上皇が上半身を起こして陰陽師を詰問する。
「これ、何をいたす?それはこのタマモからもろうた大切な品……」
陰陽師はゆっくりとフーちゃんに視線を向ける。フーちゃんはなぜか真っ青な顔をして、体がかすかに震えていた。
「あれえ!誰か、誰かあるか?」
すぐに数人の護衛の武者が部屋に駆けつけて来た。腰の刀の柄に手をかけながら、その陰陽師に向かって叫ぶ。
「何奴か?ここを院と知っての狼藉か?」
だが陰陽師は武者たちには目もくれず、袴の腰に下げた小さな魚型の飾り物を手に取り部屋のあちこちにそれをかざす。あのピピピピという音はその飾り物から出ていたようだ。やがて音がどんどん大きくなっていき、陰陽師がそれを上皇の体に向けた時音が一番大きくなった。
陰陽師は武者たちが制止する間もない素早さで上皇のすぐ傍に走り寄り「お上、御免!」と叫んで上皇の着物の懐に手を突っ込み、布に包まれた何かを取り出した。結び目を解くと中から黄色がかった銀色に輝く小さな球体が床に転がった。
陽菜はそれが昨日の朝、フーちゃんが上皇に渡した物だという事に気付いた。陰陽師が手の中の飾り物をその球体に近づけると、あのピピピピという音が耳をつんざくほどに大きくなった。
一体何が起きているのか見当もつかず、茫然として立っている武者や女官たちを尻目に陰陽師は自分の懐から小さな金属らしき物で出来た四角い箱を取り出して、球体を箱の中に入れ蓋を閉める。するとピピピピという音が急に小さくなる。上皇が上半身を起こして陰陽師を詰問する。
「これ、何をいたす?それはこのタマモからもろうた大切な品……」
陰陽師はゆっくりとフーちゃんに視線を向ける。フーちゃんはなぜか真っ青な顔をして、体がかすかに震えていた。



