それから四人は牛車の真後ろから後をついて都の大路を、警護の武者たちに周りを囲まれるようにして歩いて行った。その道すがら、陽菜はフーちゃんには聞こえないように玄野の耳もとに口を近づけて、悪友をからかって退屈しのぎをする事にした。
「ヒヒヒ、ゲンノ、心穏やかじゃないだろ?」
「なんだよ?」
玄野も周りの武者たちに聞かれないように蚊の鳴くような声で答える。
「フーちゃん、すっかり気に入られちゃったみたいじゃないか?フーちゃんが年上好みだったら、どうすんだよ?」
「いや、いくらなんでも年上過ぎだろ」
「そうとは限らないぞ、この時代では」
目だけ笑った顔で明雄が横から茶々を入れた。
「源氏物語の紫の上の話を知らないかい?それに相手は上皇様だからな。たいていのご無理ご無体は……」
「いや、だから、なんで二人して俺にそんな話をするんですか?」
少しむっとした表情で、また少しむきになって言い返す玄野に陽菜が追い打ちをかける。
「とぼけんなよ。おまえ、初めて会った時からフーちゃんの事を妙に気にしてるじゃないか?一目ぼれってやつだろ?ひょっとして初恋か?」
「おい、いくら俺でもこの年で初恋はないだろ!」
フーちゃんに一目ぼれ、という所は否定しない玄野に陽菜は自分の体をくっつける。
「だってゲンノ、ずいぶん付き合い長いのに、あたしにはそれらしい素振り一度も見せた事がなかったじゃん」
「いや、それは俺の趣味が正常なだけかと……」
「そういうもんか?……いやちょっと待て、今のはどういう意味だ?」
「あ、いや、別に。おっと、着いたみたいだぞ」
「ヒヒヒ、ゲンノ、心穏やかじゃないだろ?」
「なんだよ?」
玄野も周りの武者たちに聞かれないように蚊の鳴くような声で答える。
「フーちゃん、すっかり気に入られちゃったみたいじゃないか?フーちゃんが年上好みだったら、どうすんだよ?」
「いや、いくらなんでも年上過ぎだろ」
「そうとは限らないぞ、この時代では」
目だけ笑った顔で明雄が横から茶々を入れた。
「源氏物語の紫の上の話を知らないかい?それに相手は上皇様だからな。たいていのご無理ご無体は……」
「いや、だから、なんで二人して俺にそんな話をするんですか?」
少しむっとした表情で、また少しむきになって言い返す玄野に陽菜が追い打ちをかける。
「とぼけんなよ。おまえ、初めて会った時からフーちゃんの事を妙に気にしてるじゃないか?一目ぼれってやつだろ?ひょっとして初恋か?」
「おい、いくら俺でもこの年で初恋はないだろ!」
フーちゃんに一目ぼれ、という所は否定しない玄野に陽菜は自分の体をくっつける。
「だってゲンノ、ずいぶん付き合い長いのに、あたしにはそれらしい素振り一度も見せた事がなかったじゃん」
「いや、それは俺の趣味が正常なだけかと……」
「そういうもんか?……いやちょっと待て、今のはどういう意味だ?」
「あ、いや、別に。おっと、着いたみたいだぞ」



