「ほ、ほう。藤原の血を引く者であるか。さては東国の戦乱から逃れ来た者か?」
「は、はい、そのような事でございます」
「今宵行く当てはあるのか?」
「いえ、しばし都に逗留して今後の身の振り方を、と思っております」
「ならば我が屋敷に招こう。連れの者も共にな。そなたのごとき珍しい女人、しばし話がしたい」
それを聞いたお伴の武者たちが牛車に駆け寄ってあわてて中の人物に言う。
「お上!ご酔狂が過ぎまする」
「堅苦しい事を申すでない」
牛車の中の人物は急にくだけた声色になった。
「朕はもう帝ではない。そういう堅苦しい事から逃れるために顕仁(あきひと)に位を譲ったのであろうが。タマモと申したか、みなで我が屋敷に逗留するがよい。遠慮は無用じゃ。このままついて参れ」
フーちゃんは再び明雄に視線を向け判断を求めた。明雄は数秒ためらったが、険しい表情で最後は大きくうなづいた。フーちゃんは牛車の方に向き直り、頭を下げて中の人物に告げた。
「上皇様のお望みであれば、謹んでお言葉に甘えさせていただきまする」
「は、はい、そのような事でございます」
「今宵行く当てはあるのか?」
「いえ、しばし都に逗留して今後の身の振り方を、と思っております」
「ならば我が屋敷に招こう。連れの者も共にな。そなたのごとき珍しい女人、しばし話がしたい」
それを聞いたお伴の武者たちが牛車に駆け寄ってあわてて中の人物に言う。
「お上!ご酔狂が過ぎまする」
「堅苦しい事を申すでない」
牛車の中の人物は急にくだけた声色になった。
「朕はもう帝ではない。そういう堅苦しい事から逃れるために顕仁(あきひと)に位を譲ったのであろうが。タマモと申したか、みなで我が屋敷に逗留するがよい。遠慮は無用じゃ。このままついて参れ」
フーちゃんは再び明雄に視線を向け判断を求めた。明雄は数秒ためらったが、険しい表情で最後は大きくうなづいた。フーちゃんは牛車の方に向き直り、頭を下げて中の人物に告げた。
「上皇様のお望みであれば、謹んでお言葉に甘えさせていただきまする」



