周りの通行人があわてた様子で道の端に寄る。どうやら誰か身分の高い人物が通るらしいから自分たちも道の端にどいた方がいい、と明雄が言うので、四人は近くの木の塀に背中を張り付けるようにして牛車をやり過ごそうとした。牛車が四人のすぐ目の前に来た時、急に突風が吹き、フーちゃんが被っていた帽子が飛ばされた。玄野が飛び上がってキャッチしてすぐフーちゃんに手渡したが、十秒ほどフーちゃんの流れるような長い金髪が丸見えになってしまった。
「停めよ」
牛車の中から老人のようなややしわがれた声が響き、牛車は陽菜たちのまん前で停止した。牛車の窓に耳をつけて何かを中の人物と話していた、武者風の男の一人が陽菜たちの方につかつかと歩み寄って来た。そしてフーちゃんの正面に立って、彼女に威張りくさった口調で命じる。
「そこな娘。その被りものを取って見せよ」
陽菜は一歩前に出て、ムカついた口調で言い返す。
「ちょっと、なによ、あんた。この子に手出す気ならただじゃおかないわよ」
「控えよ、無礼者!」
その武者は語気を強めてさらに言い募った。
「あの車の中のお方をどなたと心得る。畏れ多くも、先の帝であらせられる。お上の命に従わぬと申すか?」
それを聞いた明雄はとっさに他の三人の肩を力まかせに押して地面にひざまづかせた。不服そうに何かを言おうとする陽菜にそっと耳打ちする。
「シッ!あれは上皇だ。元天皇だ。言われた通りにしないと命が危ないぞ」
その武者はひざまづいたフーちゃんにさらに詰め寄った。
「娘、被りものを取ってお上に顔をお見せせよ」
「停めよ」
牛車の中から老人のようなややしわがれた声が響き、牛車は陽菜たちのまん前で停止した。牛車の窓に耳をつけて何かを中の人物と話していた、武者風の男の一人が陽菜たちの方につかつかと歩み寄って来た。そしてフーちゃんの正面に立って、彼女に威張りくさった口調で命じる。
「そこな娘。その被りものを取って見せよ」
陽菜は一歩前に出て、ムカついた口調で言い返す。
「ちょっと、なによ、あんた。この子に手出す気ならただじゃおかないわよ」
「控えよ、無礼者!」
その武者は語気を強めてさらに言い募った。
「あの車の中のお方をどなたと心得る。畏れ多くも、先の帝であらせられる。お上の命に従わぬと申すか?」
それを聞いた明雄はとっさに他の三人の肩を力まかせに押して地面にひざまづかせた。不服そうに何かを言おうとする陽菜にそっと耳打ちする。
「シッ!あれは上皇だ。元天皇だ。言われた通りにしないと命が危ないぞ」
その武者はひざまづいたフーちゃんにさらに詰め寄った。
「娘、被りものを取ってお上に顔をお見せせよ」



