試合が始まって空気が引き締まる。

この雰囲気がたまらなく好き。

お互いに探りあいながら
先に動いたのは中村だった。


「小手あり!!」

一本とったのは才賀。
今までの試合ではこんな剣道じゃなかった。

こいつ・・・本気じゃなかった?


中村も呆気にとられているようだ。
こいつの剣道は下手ではないんだけど
くせが強いからあたしはすごくやりづらい。

といっても
試合をしたのは小学校までだけど。



今度は先に才賀が動いた。

「面あり!勝負あり!」


スピードが違う。
格が違うんだ・・・
こいつは全国レベル。
強いと言われるあたしだって
県大会入賞までだ。


「強ぇ・・・」

和樹は若干ビビっているようだった。


『気に食わねぇ。』

「へ?」

『だっておかしいだろ?
今まで手抜いてたんだぜ?
剣道なめんじゃねぇよ!』

「別になめてねえけど。」

聞き慣れない声がして
ばっと後ろを振り返ると才賀が立っていた。