この街へ出てきてかれこれ3年と半年ばかり
歩き飽きたこの道も後半年でおさらばだろうか
そんなことを思いながらだらしなく歩く典型的な現代の若者が一人…

織田 舞斗 若干22歳

名前だけは立派だの名前負けだの罵られるのも日常茶飯事になってしまった今日この頃
夏の暑さも陰る季節が来たがまだムシムシと暑苦しく額に汗を滲ませ、じゃりじゃりと盛大に音を鳴らす行為で足下の汚れきったスニーカーの寿命を磨り減らしている事に気付かず、サラリーマンや家出少女などしか歩いていない街を平日にもかかわらず徘徊している。
だからといって両親の期待を遥かに下回る二流いや三流大学をサボっているわけではなく大学4年ともなれば卒業したも同然で、なけなしのように両親からもらった真面目さが手伝って単位はとっくにとりおえていた。
俺だって意味もなく街を徘徊しているわけではなく目的は明確だ。
大学に通う以外は家から出ない引きこもり男がこんな暑くて息苦しい街に繰り出すわけがなく最近一方的に振られた彼女とお揃いだった食器など生活用品諸々を彼女が別れ際に怒りに任せて割るわ捨てるわで生活用品一式を失ってしまい、人間としての生活が困難になったので暑さで死にそうになりながら街を徘徊している。
嗚呼…思い出すだけで直接的な暴力の頬と間接的な言葉の暴力にやられた耳がじんじんと痛むような気がしてきた。