黒猫にご注意を



「あぁ。お前だけだ。」


__お前が必要だ。



はっきりと言われた訳ではないが、私にはそう聞こえた。誰かに必要とされたことのない私は“必要とされる”ことが何よりも嬉しいらしい。ホッと暖かくなる。アークに微笑みかけた。自分でも無意識に。


「そっか」

「ーーーーっ!」


私は知らなかった。この時、私の笑みでアークが朱に染まっていたことなど。





___コンッコンッ


木製の扉を叩く音が聞こえ扉をジッと見据え構える。

__“大丈夫”そうはわかっていても身構えてしまうのは本能に“恐怖”が植えつけられているからだろうか。


「アーク?入るよ」


柔らかな男の声とともにキィと扉が開く音が聞こえる。隣ではアークが頭を抱え呆れた笑いを溢す。


「・・・目、覚めた?」


優しそうなタレ目を細めて私をジッとみる。
栗色の毛が緩やかにパーマがかかっており柔らかな印象をうけ、タレ目が優しそうな感じを出す。


「初めまして、だね。僕はアル。君は?」


アル、と名乗った男は握手を時雨に求める。一瞬だけ躊躇したがすぐに彼の手に自分の手を重ねた。


「・・私は霧雨、時雨。」


彼は、口の中でキリサメシグレと呟き嬉しそうに目を細めた。アークはブスッと拗ねたような顔でアルを見つめた。
アル、と声に出した。
アルは、ん?と時雨に微笑みかけた。ちょっとだけ嬉しそうに言う。笑いかけてくれることが嬉しくて、


「よろしくね」