翡波が客席の一角を見てはにかんでるのが見えた。

そこにはきっと明がいるんだと思う。

 「あたし、正直言うと…。
  ライブ中の記憶、あんまないんだ。」

瀬名にあたしはそう打ち明けた。

 「亜緒も?
  実はオレも!
  楽しすぎてさ~、何してるかわか
  んねぇんだよね!」

 「そうなんだ。
  でも…最高のライブだったね。」

瀬名は笑顔で頷いてくれた。

その後、ステージの裏で軽音部全員の写真を撮った。

皆、汗だくでTシャツもべチャべチャだけど…。

すごくいい写真。

達成感がにじみ出ていた。

 「…疲れた~!
  楽しかった~!!!」

 「さっきからうるせぇよ、バカ。」

初めてのライブは大成功。

またお客さんの前で歌える日が来ると思うと、あたしは楽しみなんです。