「じゃあ、親父に頼まれてやったん
  だ?」

 「うん。
  こんなことになるんなら、引き受
  けなけりゃよかった。
  自分、情けなさすぎ。
  俺さ…女形から離れるためにベース
  始めたんだよ。」

…瀬名は本当にそう思ってるんだろうか。

 「俺は…瀬名が信じる道を行けばい
  いと思う。」

…結局、それしか言えなかった。

俺には人にどうこういう筋合いもない。

 「…サンキュ。」

着替えは持ってこなかったくせにベースだけはちゃんと持ってきてやがった。

瀬名らしいな。

女形から離れるため?

嘘つくなって。

 「あとで、セッションしような。
  2人でしばらく弾いてないし。」

 「賛成。」

俺は…少しでも瀬名の力になれたんだろうか?