「ああ、いいんだよ。
  俺がいなくったってなんとかな
  るさ。
  しかも、親父殴って出てきちゃ
  ったしね。
  あわせる顔ないっての。」

瀬名がククッと喉を鳴らして笑った。

 「…そんなもんなのか。」

 「そうそう。
  女形やってるってだけで虐められ
  たりとかしたしね。
  学校も結構休んだりしたし。
  正直、好きでやってたわけじゃね
  ぇんだ。」

そう話す瀬名の顔は悲しそうだった。

そんな瀬名に俺は何も言ってやれなかった。

 「…好きでやってるわけじゃねぇの
  にさ…。
  好き勝手言われて。
  元々好きじゃなかったのにもっと
  嫌いになったっての。」

 「だから辞めた?」

瀬名は何も言わずに頷いた。

 「今回もそうだよ。
  あのクソ親父…。
  俺が仕方なくしてやってんのに。」