…瀬名が泣いた。

はじめて泣いていた。

理由を聞いてもなんでもないって辛そうに笑う。

 「どうしたんだよ?」

 「なんでもないよ、マジ。」

瀬名は汗だくだった。

あたしは瀬名にタオルを差し出すくらいしか出来なくて…。

 「…ゴメン。」

…ゴメンって何?

そんなのよりも…あたしは理由が知りたいよ。

ちゃんと話してよ。

 「亜緒。」

…声に出ていた。

そんなあたしの横を通り過ぎて、翡波が瀬名に歩み寄る。

 「そうだよ。
  話してよ。
  てか…話せよ。」

翡波が瀬名の肩を抱いた。