「結局、瀬名…。
  来なかったな。」

片づけをしながら郁月君がそう呟いたのが聞こえた。

 「連絡もなかったしね。」

サボり?

まさか。

瀬名はそんなことしない。

 「あとで俺から連絡してみる。」

枯れ気味の声で翡波がそう言いながらコードをまとめた。

 「頼むわー。」

翡波は想像通り歌が上手だった。

まだ、あたしにしか聴かせてくれてないけど…。

本番は完璧な仕上がりになっていると思う。

 「亜緒、ちょっといい?」

 「え?」

ソラ君から呼び出しがかかった。

あたしはソラ君に続いて外に出る。

 「翡波の歌、どうだった?」

…ソラ君、気づいてたんだ。

 「ん…。すごくよかったよ。」