「立てる?」

 「…。」

あたしは頼哉の手を無視して椅子に手をかけて立ち上がった。

 「うわっ…。」

 「…おっと。」

頼哉があたしのことを支えてくれていた。

…なんであたしなんかに優しくするの?

 「…ゴメン。
  もう帰るから。」

 「ちょい待ち。
  寄ってけって!
  オレ、お前に会えてめっちゃ嬉しいん
  だし。」

会えて嬉しい?

意味わかんない。

 「だって…あたし…。」

 「いいから!」

病室に入ってもあたしは無言のままだった。

 「元気だった?亜緒?」

 「…。」

まさか。見ればわかるじゃん。

 「…オレの腕のこと聞いた?」

小さく頷いて見せる。

これは…事情聴取…。

あたしはそう解釈した。