風花

「久しぶりだな。飯いくの」

『本当、あの焼き肉依頼！･･･あ。すみません。』

「？何が？」

『あ。なんでもないです。』
綾部から家庭の事聞いたなんて言えない。
我ながら、つい謝ってしまったことは情けない。


『お体、もう大丈夫ですか？』

「あぁ。綾部に聞いたの？」

『えぇ。』

「そっか。そっか。心配かけて悪かったね。もう大丈夫。」

良かった。本当に良かった。

久々に話す清谷さんとの時間は心地よかった。

あっという間に時間が過ぎ、終電近い時間になっていた。

『今日はありがとうございました。楽しかったです。あと、体大事にしてくださいね！』

「さんきゅ。」

『おやすみなさい。また明日』

軽く頭を下げて、清谷さんを見上げると･･･。



清谷さんが私を包んでいた。


『清谷さん？！』

「ごめん。少しだけ。」

頭が真っ白になった。


･･･が、気がついたら私は応えていた。


何故か理由は分からないが、私は清谷さんの腕をふりほどくどころか清谷さんの背中に腕をまわしていた。

清谷さんの背中が、まるで迷子になった子供のように泣いてるように感じた。