【短編】だから傍にいて、





「―――もしもし、」



きっと冷たい機械の奥から、温かく聞き慣れた声が聞こえるはず。



『やぁ』



ほらね。



「何の用?」


『おっと…何だかご立腹みたいだね』



くつくつと電話の向こうであの人が笑う。

ゆっくりと体から力を抜き、空を見上げた。



「…今、どこ?」


『さぁ…どこだろう』


「こっちに向かってるの?」


『君はケーキが好きだったよね。特にフルーツタルト』


「寒いんだけど」


『だけど残念。今日はシュークリーム』



分かってる。

全く受け答えがなっていないことなんて。

いつものことだ。