寒い。
ハァとコートの袖から覗くかじかんだ指先に息を吐きかけた。
ぼんやりと白くなった空気。
冬だな、
何度も赤くなった肌を摩り、息を吐きかけながらぼんやりと思う。
ちろちろと降り出した雪を眺めながら、スッと目を細めた。
『じゃ、また明日、いつものとこで』
いつもと変わらぬお決まりの台詞を耳に残し、ふわりと少し長めの黒髪を靡かせながら去っていった後ろ姿。
時間は?
そんなことも尋ねさせなかった。
いつものことだ。
『君が来たら僕も来てるはずだから』
そう言って笑う口元にぽつりと乗った黒子を見つめ、そんな馬鹿なことがあってたまるかと、毒づいた。