そしてスッと後ろに1歩下がると、彼は踵を返してドアの外へと姿を消した。
その後も…
何人かの男の人とおしゃべりをしたけれど、私の心からアルフレードの影が消えることはなく。
私は彼に貰った紅いバラを肌身離さず、握り締めていた。
時折理子とすれ違った時に
「あんた、そんなにバラの花を握り締めてたら、そのコ枯れちゃうわよ?」
と笑われたけれど、私は早くしおれてくれればいいのに…と願っていた。
だってこのバラがしおれた頃には彼にもう一度会えるんでしょう??
名前も
素性も知らない
私のアルフレード。
29歳にもなって恥ずかしいのだけれど、私の心は完全に彼に奪われていた。
もう一度あいたい。
もう一度だけ彼とおしゃべりしてみたい。
そう…強く強く願っていたから。
「ヴィオレッタ様…ですね??
先ほどお帰りになられましたアルフレード様から、このようなお手紙をお預かりしております。」
『柚月』と書かれたネームプレートのつけられた男性から小さなピンクのメッセージカードを受け取った時。
私の心は今まで感じたことのないような喜びに打ち震えていた。



