『それで、何でそんなに落ち込んでるの?』

「へっ!?ぇと、その…」


まさかの痛いところを突かれて吃り始める柚。

口が裂けても本当のことは言えない。

言ってしまったら私は――…


「…さむっ!」


想像しただけで柚は身震いをした。

余程、伊津のことが怖いのだろう。


『ゆず、ちゃん?』

「ぁ、あのっ、そのっ、さっきちょっと先生に怒られたからさッ、それでだよっ」


柚にとっては分かりやすい嘘。

だけど、


『そっか。ドンマイ。』


知り合いになってちょっとの佳菜子はそれを信じたらしい。

前を向いた佳菜子を見ながら、佳菜子が鈍感で良かったと安堵した柚だった。