『んー頼み事ってのはな、伊津に学校案内をしてもらいたいんだ。』

「学校、案内…?」

『ぁあ。別にお前1人でとは言ってない。友達と一緒でもいい。伊津に学校案内してやってくれ。』

「…………」


井上先生は敢えて、柚に伊津本人からの依頼だとは言わなかった。

伊津の名前を出した時の柚の反応を見て、言わない方が良いと判断した結果だった。


そんな井上先生の思考を知りもしない柚は、本格的に悩んでいた。

断ろうと思ったけど、友達と一緒でもいいなら…

佳菜子ちゃんとか誘って行けば、大丈夫だよね。

二人っきりにはならないでしょ…


「…分かりました。やります。」

『いっ…いいのか!?』


覚悟を決めた柚。

突然、承諾してくれた柚に、井上先生は驚きを隠せなかった。


「はい…頑張ります。」

『ぁ、ぁあ…よろしくな。』


柚には似合わない深刻そうな顔をして席に戻っていった柚を見ながら、井上先生は首を傾げていた。