トタタタタッ


早朝8時前。

静かな校舎に足音を響かせる女の子が1人。

もうすぐ秋だが、まだ暑いので少女の額には汗が伝っていた。


「ヤバいよぉーーっ!!」


彼女の名前は、森山 柚(モリヤマ ユズ)。

2つ結びにした髪。
整えられた眉。
並より少し長い睫毛。
大きな目。
右目のそばにある小さなホクロ。
薄い唇。

頑張って入学した進学校に通って一年5ヶ月ちょっと。

気づけば高2だ。


トタタタタッ

「はぁっ…はぁっ…」


この早朝に、彼女は廊下を走っていた。

ヤバいよ…っ

あと何分!?


教室まであと少しだと、足に負荷をかけた時…――


キーンコーンカーンコーン…


聞き慣れた学校のチャイムが鳴り響いた。