聖夜が、今からじゃ入学式に間に合わない、教室に行けと言うので、私は教室へ向かった。

 
 おそるおそるドアを開ける。

 教室にはすでに、クラスメイト達の姿が。
 きちんと座って、先生の話を聞いていた。

 「あっ、あのっ、すいませんっ、保健室に行っていて、入学式に出られませんでしたっ」
 恥ずかしさが私を襲う。

 「はい。自分の席に座ってください」
 先生が機械的に言った。

 私は急いで席に着く。
 今度は滑り落ちないように。

 「大丈夫だった?」
 隣の席の子が、声をかけてくる。
 優しそうな、男の子。

 「あっ、さっき、大丈夫って声かけてくれたの、あなた?」
 私が尋ねると、彼は顔を赤らめた。

 「ありがとう」

 「どう…いたしまして。僕は深沢優希。よろしくね」
 「私は坂口もえぎ」


 私は軽く頭を下げながら、自分が「ありがとう」を言ったことに驚いていた。
 
 聖夜と出会ってから、なんだか素直になれてきた気がする。
 私はそう思いながら、金髪のイケメンを頭の中に思い浮かべていた。