そして、あっという間に放課後。


 私は聖夜との待ち合わせ場所の、校庭へと向かった。

 「え?」

 校庭にはすでに、人だかり。
 
 「何かあるのかな…?」

 つぶやきながら人だかりの方へ向かう。

 私は人の波をかき分けながら、人だかりの中心へと走った。

 
 「!」

 その中心にいたのは…

 「のえる!?」

 そう、聖夜だった。

 「本村様の名前を、軽々しく呼ばないで」

 茶髪の、キツそうな女の先輩が、わたしのことを睨んだ。

 「あんた、一年よね。何様のつもり?」

 その先輩に、問い詰められる。

 「えっと…私は…」

 しどろもどろになりながら、必死に答えようとする私。
 
 「私は…聖夜の…」

 「はぁっ?本村様の何?」

 先輩の勢いは止まらない。

 
 
 怖いよ…

 助けて…聖夜…

 
 
 とそのとき…

 「俺の女に手ぇだすんじゃねぇよ」

 たくさんの人たちに囲まれていた聖夜が、こちらを向いた。

 綺麗な瞳が茶髪の先輩を睨んでいる。

 「本村様…」

 先輩が、うっとりとした表情になる。


 「早くもえぎから離れろ!」
 
 聖夜が一喝。

 先輩は黙って、私から離れてくれた。



 「ほら、行くぞ」

 ぽかんとしている私の腕をつかんで、聖夜は歩き出した。