薄暗い早朝の部屋。


カーテンの隙間から漏れる日の光が、白いタバコの煙をうっすらと浮かび上がらせていた。


俺はベッドの上で昨夜の帰り道、坂木が言ったことを思い出していた。


『蓮華の事が好きだ』


わかってる。


俺は気持ちを隠さなきゃならない。


口にくわえていたタバコを一度、大きく吸って、煙を吐き出した。


親友のためだから。


タバコの火を灰皿で擦り消し、俺は隣で寝息をたて始めた女の子の体に手を伸ばした。


「ん…っ」


寝ぼけたままで微かに声をあげたその子の首筋に、ゆっくりと唇を這わせた。


『俺は…隣のクラスの保田さんが好きだな。』


坂木に言ったことは嘘じゃない。


女の子は1人だけじゃない。


そう。


なら俺はこの子を好きでいればいいだけなんだ。


部屋の外ではもう、日暮が鳴き始めていた。