熱気が籠る狭いライブハウスの中。


満員の会場の中、僕は全身汗まみれになりながら、ベースを奏でていた。


後ろには、僕と同じように汗をかきキーボードとドラムを弾くメンバーがいる。


そして隣にはギターをかき鳴らし、楽しそうに歌う彼女の姿があった。


2年と半年。


長いようで短かった僕たちのバンドの歴史が、次の曲で終わろうとしていた。


その曲を歌うのは彼女ではなく、僕だ。


キーボードの緩やかな旋律に乗せて、今。


僕は最後の曲を歌い始めた……。