母親の結婚生活とは、比べることはできなかった。


できちゃった結婚の自分達に、新婚生活なんてものはなく、相手を深く知る前に、子供の親として家族として生活してきた自分達と、何も比較できる事がない。


「祐輝さんとの夫婦生活に、何か疑問でもあるの？」


「ううん…大丈夫。ちょっと疲れたまってたのかもね。ごめんね。気にしないで」


母も今はそれ以上祐輝のことを話そうとはしない。


ただ…


「晴香、昨日会ってたの憲吾じゃないんだよね…」


母は晴香から目をそらさずに、見つめながら聞いてみる。


憲吾…


名前を聞いて微妙に反応した晴香を、母は見逃さなかった。


「違うよ～里美達と会ってたんだって…どうして憲吾と会うの～？」


「そう…」


簡単に答えた母の声…


こんなふうに答える時には、母は何かを確信している時…


でもお互いそれ以上、その事に触れることはなかった。